投稿日:2018年6月12日|カテゴリ:ブログ

今回はやせ薬があるかということです。
薬を考える場合にはまず食欲の経路を考えます。

 

・カロリーの吸収を抑える薬
・脂肪細胞を刺激する薬
・最後に食欲中枢を抑える薬

の3つがおおよそ考えられます。
まず吸収を抑えるのに市販薬ナイシトール、防風通聖散、コレバインなどありますが、あまり強い効果は期待できません。ゼニカル(オルリファスト)が内科の本では有効であると書いてあります。この薬はリパーゼという酵素を阻害するので、脂肪が分解されず吸収できなくなります。脂肪が全部便に出ることになります。日本では製造されていないので、取り寄せになります。一度、武田製薬が(この薬の弱めの薬と聞いたことがありますが)製品化しようとしたけれども結局厚生省の認可が下りなかったと聞きます。
実は患者さんに依頼されて頼んだ時に飲んでみたのですが、かなり強烈な下痢と脂肪便で、飲み続けられませんでした。ふつうの下剤だと水分が出るだけで、結局は同じ量を飲んでしまい、体重には差がないのですが、ゼニカルは理論的にはいいことになります。

 

脂肪細胞を刺激する薬というのはありません。
アドレナリンβ3という受容体が脂肪には特別に認められるので、それを刺激する薬を開発しようとしているようです。
しかし、アドレナリンはβ1,2が心臓や肺にあるので、副作用としてこちらの作用が出ることも考えられるのでどうなのでしょうか。辛子、つまりカプサイシンの受容体も脂肪にあります。しかし、カプサイシンを飲むわけにもいかず、皮膚に塗ったりしたら、強すぎてアレルギーを起こします。辛くないカプサイシンというのもあってカプシエイトといいますが、これもやせ薬にはならなかったようです。脂肪細胞に特有な代謝経路を刺激する薬も作っているのかもしれません。今のところはニュースにも登ってきていないようですが。

 

食欲を落とす薬はどうでしょうか。サノレックスという薬が承認されています。脳内で、セロトニン、ノルアドレナリンなどの伝達を増やして満福中枢を抑制するものです。このような作用は向精神薬も持っています。まあ、精神病の薬をいろいろ飲んでいる人は痩せている場合が多いので、似た薬を飲んでいることになります。それだけ副作用もあるということです。アンフェタミンという脳の興奮を伝える薬も麻薬ですが、痩せます。メタンフェタミンにして副作用を減らし、合剤を作っていろいろ刺激するカクテルのような薬もできています。キューシミアといってアメリカでは承認されましたが、一般的には使われていません。マリファナもやせます。これはカンナビノイドという受容体を刺激しますが、同じように副作用のないカンナビノイド刺激も考えられています。

 

食欲を制御するレプチンを注射するのもあります。脂肪がなくてレプチンが出ない非常にまれな脂肪萎縮症という病気にだけ適応になっています。レプチンはまたGLP1という消化管からでるホルモンを刺激することもわかっています。このGLP1も食欲を落とします。というか、GLP1はそもそも食後の血糖を下げる消化管から出るホルモンとして見つかったわけです。いずれにしてもこれらのホルモンは食欲が落ちますが、慣れが生じるようで効かなくなるようです。

 

現在までのところ、うまく痩せるような副作用のない薬はありません。
やはり、薬には頼らず自分の意志で、レプチンを増やして、食欲をコントロールするのがいいようです。