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マンジャロ🄬、リベルサス🄬などのGLP-1製剤についての詳細③
どうも鈴木俊嗣です。
私事ながら今朝のインボディ。
この1か月で体脂肪率19.3→16.8%(-2.5㎏)、筋肉+0.1㎏、体重-2.3㎏でした。
4か月トータルで体重10㎏減少(うち脂肪8.6㎏)体脂肪率24.3→16.8%。
これを野球観戦でどばどばビール飲みながらやるのはなかなかえげつないと自分で思います(笑)
さて、3部作記事の3つ目になります。
1つ目がhttps://www.edogawabashi-clinic.com/archives/1048になります。
2つ目がhttps://www.edogawabashi-clinic.com/archives/1050になります。
2つの内容を踏まえて、これらの薬が起こす体重減少について解説していきます。
長いので、ちゃんと読む場合は腰をすえていただけると。
1,飢餓による体重の減少
過去の2つの内容で解説したように、満腹状態が続くので食欲が落ちます。
結果食事量が低下します。
つまり身体を強制的に飢餓状態に置くことになります。
当たり前ですが食事によるカロリーが減れば当然体重は落ちますね。
では健康な人が飢餓になると、どうなっていくのかを解説していきます。
2,基礎代謝量とそれを決めるもの
まず最初に、生きているだけで消費されるエネルギーについて解説しておきます。
寝たきりであっても呼吸、心臓を動かす、脳を動かすなど最低限のエネルギーが必要になります。
いわゆる基礎代謝量というのがそれにあたります。
筋肉が多ければこの基礎代謝量が増えるため、体脂肪率が低く筋肉が多い人が基礎代謝が上がり、
その結果太りにくい体になるということです。
また年齢が若い方が当然必要なエネルギー:カロリーは多いです。
当然身長が高く大きな人の方が必要カロリーは多いです。
ですから年齢や筋肉量、体重が基礎代謝量を決める因子になります。
3,血糖が下がったときに起きる反応:糖新生
健康な人がGLP-1製剤を使用すると、当然カロリー不足になるため血液中の糖分が不足します。
いわゆる低血糖になります。
そうなると体は糖分を糖以外の物質から作ろうとします。
この現象を糖新生と呼んでいます。
まず、肝臓に蓄えられたグリコーゲンが使われます。
しかし、それが尽きると、身体は次に何を燃やすか?
低血糖でエネルギー不足の身体にとって、維持にコストがかかる筋肉は、脂肪よりも先に分解の対象となります。
結果、筋肉を分解して糖を作るという、生命維持のための「禁じ手」が発動します。
脂肪は非常食ですが、筋肉はエンジンそのものです。
身体はやむなくエンジンそのものを壊して燃料にしてしまうのです。
4,代謝の崩壊とフレイルの入り口
筋肉が減れば、何が起きるか。
2で触れた基礎代謝量の激減が起きます。
つまり脂肪を燃やすエンジンそのものが小さくなり、より「太りやすく、痩せにくい」身体へ作り替えられます。
さらに活動性の低下を招きます。
筋肉が落ちれば動くのが億劫になります。
同じ歩くのでも、筋肉量が減っている高齢者の場合、大変そうなのは理解しやすいでしょう?
活動量が減れば、腸の動きもさらに悪くなり、食欲はさらに減衰します。
便秘の時に食欲が落ちるのは、皆さん経験があるのではないでしょうか?
「筋肉低下 → 動けない → さらに筋肉低下」
高齢者が陥るフレイル(虚弱)に、自分から高いお金を払ってなりにいっているのです。
これが薬をやめたときの、リバウンドしやすい原因です。
基礎代謝が落ちるので、やめた瞬間に元に戻るのではなく。
より脂肪だけが増え、基礎代謝が低下し、太りやすい身体になっているのです。
5, 肝臓の悲鳴:痩せているのに「脂肪肝」
ではやめないでこの薬を続けるとどうなるか、をみていきましょう。
飢餓の先にあるのは、タンパク質不足とエネルギー枯渇による肝臓へのダメージです。
飢餓によるNASH(非アルコール性脂肪肝)を引き起こす可能性があります。
タンパク質が足りなければ、肝臓は脂肪を外に運び出すためのトラック(いわゆる善玉コレステロール)を作れません。
肝臓にエネルギー源としての脂肪がたくさんあるのに、運送業者たるタンパク質(トラック)がいない。
これが痩せているのに脂肪肝になるという正体です。
体重を減らして健康になろうとしたはずが、肝臓には脂肪が溜まり、臓器としての機能を失っていく。
まさに本末転倒です。
加えて肝臓に限らずすべての臓器がダメージを受けていくのです。
6,結論:失っているのは、あなたの「健康寿命」
エネルギーがなければ、内臓も筋肉も、そして脳もダメージを受けます。
体重計の数字と引き換えに、あなたは二度と戻らない「生命の余力」を差し出しているのです。
ここまでの長文、読んでいただきありがとうございました。
これらのリスクを踏まえた上で薬を自費で使用するというのなら、もう止めません。
ええ、医師として警告はしましたからね、と立場上言えますから。
問題は、こういったことを警告せずに、書面に自己責任ですと示したうえで、とやる手法です。
かみ砕いて書いてもこれだけの文章量と参考文献が必要になるのです。
・・・ちゃんと説明をされていますか?
すべての医療現場に送る問題提起です。
ではまた。
参考文献
1,Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity.
- New England Journal of Medicine. 2021;384(11):989-1002.
- (セマグルチド:リベルサス🄬による大幅な体重減少を示す一方で、除脂肪体重(筋肉)の減少も同時に報告されている基本文献)
2,Sargeant JA, et al. Effects of glucagon-like peptide-1 receptor agonists on skeletal muscle motor function and size.
- Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle. 2022;13(3):1615-1626.
- (GLP-1受容体作動薬が骨格筋量や機能に及ぼす影響、特にサルコペニアのリスクを論じた研究)
3,Cavedon V, et al. Muscle Mass and Strength Loss in Patients with Obesity Undergoing Pharmacological or Surgical Weight Loss Interventions.
- Nutrients. 2023;15(15):3341.
- (急激な体重減少における筋肉量と筋力の低下、およびリバウンド時の体組成悪化を指摘)
4,Bocarsly M, et al. Glucagon-like peptide-1 receptor signaling and the regulation of energy balance.
- Frontiers in Neuroscience. 2014;8:210.
- (GLP-1が中枢神経を介してエネルギーバランスをどう書き換えるか、飢餓状態の生理的解釈)
5,Park JW, et al. Non-alcoholic fatty liver disease in lean individuals: paradox or pathology?
- Clinical and Molecular Hepatology. 2022;28(3):380-391.
- (痩身者や栄養不足における脂肪肝(NASH)のメカニズム、VLDLの輸送障害に関する解説)