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なぜ、透析患者さんに「運動」が必要なのか
どうも鈴木俊嗣です。
マンジャロ3部作から、前回は私自身の減量をコラム的に書きました。
で、今回のことがメインテーマになります。
タイトルの通り、なぜ透析患者さんに運動が必要なのか、です。
1,「安静」から「活動」へ
かつての医療現場では「透析患者さんは安静に」が常識でした。
しかし、ここ10年以上の医学研究では、その常識は完全に覆っています。
前回の私のコラムでも触れましたが、筋肉を維持し、脂肪を燃やす「動く習慣」。
これが最高のアンチエイジングであり、それは透析を受けている皆様にとっても全く同じなのです。
私の運動量はさすがに多いと思います。
ですが患者様にはそれぞれ適した運動量があります。
2. 強度が「軽く」ても効果は絶大(最新論文 AJKDより)
まず、無理な運動は不要です。
2026年5月号の米国腎臓病雑誌(AJKD)に、日本から非常に重要な研究報告がありました。
1,000人以上の日本人透析患者さんを調査した結果です。
激しいトレーニングではなく、日常生活での「歩行」や「家事」といった低強度の活動量。
これを増やすだけで、死亡リスクが大幅に低下することが示されたのです。
「少し動く」ことの積み重ねが、直接的に寿命(予後)を延ばす力になります。
買い物に行くだけでも、全く動かないよりは寿命を延ばせるのです。
3. 透析中のエルゴメーターが「脳」を活性化する(JASN)
「体」だけでなく「頭」も守ることが大切です。
まさに身体を動かすことが脳の機能を守ることに繋がるのです。
透析中に当院で推奨している「エルゴメーター(自転車漕ぎ)」には、単なる筋力維持以上の効果があります。
国内施設の研究により、透析中の運動が脳の前頭葉における酸素飽和度を上昇させることが明らかになっています。
透析後半に起こりやすい脳血流の低下を防ぎ、認知機能の維持や、思考能力を守る効果が期待できるのです。
4. 当院の取り組み:エルゴメーター対象者の拡大
これらのエビデンスに基づき、当院では現在、エルゴメーターの対象を大幅に広げています。
体力に自信がない方でも、無理のない負荷からスタートできるようスタッフがサポートいたします。
週3回の透析時間を、ただ横になって耐える時間にするのではなく。
最新の医学が認める「未来の自分のためのトレーニング時間」に変えていきましょう。
5. 一緒に一歩を踏み出しましょう
「きつくない程度で、楽しみながら続ける」。
これが私自身の10kg以上の減量を支えたコツでもあります。
患者様がいつまでも元気に、自分らしく過ごせるように。
最新の知見に基づいた「運動療法」を、ぜひ私たちと一緒に進めていきましょう。
参考文献一覧
1. 身体活動量と生命予後に関する最新知見(AJKD)
- 論文名: Accelerometry-Derived Physical Activity Levels and Mortality in Hemodialysis Patients: A Prospective Cohort Study (PROMOTE Study)
- 掲載誌: American Journal of Kidney Diseases (AJKD), 2026
- 概要: 日本人の透析患者1,030名を対象とした前向きコホート研究。日常生活における「低強度の身体活動(LPA)」を増やすことが、全死亡リスクおよび心血管イベントの大幅な減少と関連することを示しました。「激しい運動でなくとも、こまめに動くことが予後を改善する」という、現代の透析医療における重要なエビデンスです。
2. 透析中の運動と脳血流・酸素飽和度に関する研究(JASN / CJASN 関連)
- 論文名: Acute Effect of Moderate-Intensity Interval Intradialytic Exercise on Cerebral Oxygenation in Hemodialysis Patients: A Randomized Crossover Trial
- 著者: 小島 将, 他(嬉泉病院 腎臓内科 等)
- 掲載誌: Clinical Journal of the American Society of Nephrology (CJASN) 他
- 概要: 近赤外分光法(NIRS)を用い、透析中のエルゴメーター運動が前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度(脳の酸素飽和度)を上昇させることを証明しました。透析に伴う脳血流の低下を防ぎ、認知機能の維持に寄与する可能性を示唆しています。
3. フレイル・サルコペニア予防に関するガイドライン
- 文献: 日本透析医学会「血液透析患者におけるサルコペニア・フレイルに対する運動療法ガイドライン」(2025年改訂版 関連)
- 概要: 透析患者におけるフレイル予防として、透析中および非透析日の身体活動の重要性が強く推奨されています。運動が「筋肉量(サルコペニア)の維持」と「身体機能の改善」に直結することを裏付けています。