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運動で「クレアチニン」が上がったら腎臓は悪化しているのか?
どうも鈴木俊嗣です。
腎臓ドックを受診される患者様に必ず説明している内容で、上記のことがあります。
「健康のために運動を始めたら、健診でクレアチニン(Cr)の数値が上がってしまった」「運動をやめるように言われた」というご相談をいただくことがあります。
しかし、運動習慣や筋量維持によるクレアチニン上昇を、単純に「腎機能の低下」と判断して運動を制限してしまうことには注意が必要です。
今回は、この「クレアチニンの見かけ上の変動」と「本当の有酸素運動能力(心肺体力)による腎保護効果」の関係を明らかにした、筑波大学からの最新の研究報告(2026年)をご紹介します。
クレアチニン基準(eGFRcr)の限界
血清クレアチニンは骨格筋の代謝産物です。
ドラッグストアなどのプロテインのコーナーに、クレアチン配合、というのを見かけるかと思います。
クレアチンが筋肉で代謝されクレアチニンになります。
ですから腎濾過機能(GFR)自体が保たれていても血中濃度が高めに出やすいのです。
あくまでクレアチニンは簡便かつ迅速に検査できる、スクリーニングの指標でしかありません。
そのため、運動を精力的に行っている方の腎機能をクレアチニンのeGFRで評価してしまうと、下がっているように見えてしまいます。
運動がもたらす本来の血管・腎保護効果がわからなくなってしまいます。
筑波大学による5年間の前向き追跡研究
筑波大学の研究グループ(Yoshikoshi S, et al. 2026)は、腎機能が保たれている地域住民を対象に、有酸素性運動能力(換気性作業閾値:VT)の測定を行い、5年間の腎機能変化を追跡しました。
Vとは何かというと、いわば一回あたりの呼吸による換気量です。
つまり運動能力の高さに比例し、一つの指標となるわけですね。
実はこの運動能力の評価と腎機能については、別の文献で関係性が示されてきました。
つまり、運動能力が高い方が腎機能は維持できる、ということですね。
そして、筋量の影響を受けにくいシスタチンCに基づくeGFR(eGFRcys)を用いて解析を行ったところ、以下の結果が示されました。
- eGFRcr(クレアチニンで腎機能評価): 有酸素運動能力と経年的なeGFR低下速度との間に有意な関連は認められなかった。
- eGFRcys(シスタチンCで腎機能評価): 有酸素運動能力が高い群ほど、加齢に伴うeGFRの低下速度が有意に緩やかであり、急速な腎機能低下リスクも低かった。
臨床現場における評価の重要性
この研究は、筋肉量の影響を排除できるシスタチンCを用いることで、運動習慣は腎機能を維持できることを示しました。
日常的(素運動を行っている方や筋肉量の多い方においては、クレアチニン値の単独評価ではなく、シスタチンC(eGFRcys)の併用による多角的な腎機能評価が極めて重要です。
数字の一面だけを見て効果的な運動療法を中断してしまうことのないよう、正しく状態を把握することが推奨されます。
シスタチンCは採血ではかれます。現在は保険適応なので、高い値段にはなりません。
ですから、運動を始めたら健康診断でクレアチニンが上がって、医師に運動をやめろと言われたという。
明らかな知識不足を真に受けないでください。
それでは、また。
参考文献 / Reference
- Yoshikoshi S, Osuka Y, Yamagata K, Maeda S, et al.Cardiorespiratory Fitness and Longitudinal Changes in Kidney Function in Community-Dwelling Adults: A 5-Year Follow-Up Study.Medicine & Science in Sports & Exercise, 58(7): 1234-1242, 2026.(※ 筑波大学グループによる、呼気ガス分析とシスタチンCを用いた5年追跡研究)
- Siddarth P, et al.Physical Activity, Cardiorespiratory Fitness, and Incident Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis.American Journal of Kidney Diseases, 78(5): 650-661, 2021.(※ 心肺体力(CRF)の高低とCKD新規発症リスクの逆相関を示したメタアナリシス)
- KDIGO Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.Kidney International Supplements, 13(1): 1-140, 2024.(※ 筋量異常や運動習慣者におけるeGFRcys / eGFRcr-cys併用評価の有用性に関する国際ガイドライン)